境界の機能不全

人間は、ほとんどの場合、一人で孤立して生きていくことができません。誰もが自分と自分以外(他者、世界)と折り合いをつけながら生活しています。

ゲシュタルト療法では、この個人が外界と接することを「コンタクト」と呼び、健康な人は、外界とのコンタクトの取り方が柔軟で自分の自由をうまい具合に確保しつつ社会の中でやっていける人だとされます。つまり、社会と相互依存しつつも、自分を失うことなく社会で自分を活かしていける人です。

そうでない場合というのは、例えば、社会との摩擦を回避しようとするあまり、消極的で引っ込み思案になったり、社会生活から孤立して受身な立場に追いやられたりする場合です。反対に、社会の要請や他者の気持ちを考慮せずに自分の欲望の思うままに行動すると、周囲と摩擦を起こしてしまいますし、最悪の場合には犯罪者というレッテルを張られる可能性もあります。

パールズは人の心と行動の不自由さの原因を「接触境界の機能不全」と考えていました。接触境界というのは「私」と「私以外のもの」を隔てる境界のことです。そして、神経症の人に見られる不健全なコンタクトのパターンを4種類に分類しています。ちなみに、神経症を広くとらえると現代社会に生きる私たちは誰もが程度の差はあれ神経症とも考えられますから、これら4種のコンタクトの取り方を誰もがしている可能性があると考えられます。

その4種類とは、①鵜呑み(イントロジェクション)、②投影(プロジェクション)、③反転(リトロフレクション)そして④融合(コンフルエンス)です。次回以降では、それぞれについて、少し詳しく説明します。