マインドフルネス

マインドフルネス① やり方と脳への効果

マインドフルネスは、一言でいえば、宗教色を払拭した瞑想です。東洋の禅の瞑想が1960年代に米国に紹介され、宗教色を除いたマインドフルネスとして広まり、それを日本が「逆輸入」したと言えます。最近では、「集中力」「創造力」などが増す効用があるとされ、グーグルなど有名企業が社内研修に導入し始めたことを契機に、日本でもかなり広まってきていると感じています。

私が初めてマインドフルネスと出会ったのは、ハコミと呼ばれる心理療法の専門家とのセッションでした。その後、米国で心理学を学んだ際には、授業の始めには必ずマインドフルネスを全員でするクラスがあったり、教育分析(学生がクライアントとなり心理療法家から実際にカウンセリング受ける)の際にも、毎回マインドフルネスから始まりました。学生に「1日5分でも10分でもいいから毎日瞑想するように」と勧める教授も多く、学生の中には「瞑想歴10年以上」な人もざらにいました。逆に「あきこは日本人なのに瞑想しないの?」と不思議がられることも。

マインドフルネスを継続すると、脳が変化することが実証されています。突出した変化は海馬が大きくなることです(ここからニューロン新生が起きていることが推測されます)。また、扁桃体が小さくなることも観察されています。1日45分の瞑想を8週間続けると、MRI画像で脳に明らかな変化が見られます。その変化の効果は色々に言われていますが、「ものごとに反応的でなくなる」、つまり、外界からの影響に対して動じなくなり、「精神的な安定を維持しやくすくなる」というのが私の考える一番の効果です。

しかし、本来、私は瞑想は瞑想することが自体が目的だと思います。「○○の効果があるから瞑想する」というのではなく「瞑想するために瞑想する」とでもいいましょうか。瞑想は気持ちが静まって、それ自体が気持ちのよいものです。そして瞑想の効果は、おそらく宇宙で最も複雑な器官である脳を通じて現れるので、その全てを人間が予想することは難しいと思います。

さて、そのマインドフルですが、方法は簡単です。
「椅子に座る。背筋を伸ばす。目を閉じたい人は閉じる(もしくは1−2メートル先の床を見る)。足裏に接する地面(床)と、腿の裏が椅子の座面と接する面に意識を向けて安定感を確かめる。自然に息を繰り返す。吸う時は鼻から。意識を呼吸に集中する。考えが浮かんできたら、空に流れる雲を眺めるように「あぁ、考えが浮かんで流れていくな」と思って、ゆっくりと意識に呼吸を戻す。以上。」

なーんだ、と拍子抜けするほど簡単だと思われたのではないでしょうか。グーグルでマインドフルネスの社内研修プログラム「Search Inside Youself」を開発、実行した責任者Tan氏が講演で「マインドフルネスって、気恥ずかしいくらいに簡単なんですよね」と話しているビデオがあります(この投稿の終わりにもアップしていますのでよろしかったらご覧ください)。巷では、マインドフルネスのトレーニングに何時間、時には何日もかけて高額の講習料が設定されているものもあり、帰国して最初にそれを知った時には驚きました。もちろん、そういうトレーニングに参加することが無駄というわけではありませんが。

一点、マインドフルネスにコツを付け加えるとすると、それは「価値判断しない」ことです。「正しくできているか」「また考えが浮かんできてた。集中できていない」等々、価値判断をしないことです。前の記事でも触れたよう、二元論的な価値判断を行う意識から自由になることが大切です。

強調したいのは、1日45分、8週間続けないと効果がない、というわけではない点です。たまたま実験が「1日45分、8週間」と設計されたので、MRIではっきりとした効果が認められたのが「1日45分、8週間後」だったわけです。脳の可塑性は従来考えられていたよりもかなり大きいことがわかっており、例えばこの文章を読むことも、脳に何らかの影響を及ぼしているわけです。瞑想も極端に言えば1分やればそれだけ脳に影響を与えていると考えられます。45分は無理だから全くやらないのではなく、5分から始めてみるのはいかがでしょうか。私とのセッションでは、瞑想にご関心をお持ちであれば、その方の生活に取り入れやすい方法を一緒に考えていきます。もちろん瞑想が「すべき作業」になってプレッシャーに感じられないように注意をしつつ、生活スタイルの一部になるように時間をかけながら。おそらく、ある日「瞑想しないと気持ちが悪いので自然にしたくなる」ご自分に気づくのではないかと思います。

以下の動画は、グーグルのTan氏の講演ビデオです。再生11:40あたりからマインドフルネスの説明をしています。

英語での講演ですが、Emotional intelligenceはトレーニングで獲得可能な技術だと述べた上で、そのトレーニング方法としてマインドフルネスを紹介しています。ここでいうEmotional intelligenceは、感情に振り回されるのではなく、自分の感情に気付いた上で、自分でコントロールして落ち着いた気持ちを保つこと、と定義しています。また、マインドフルネスの技術は7週間で習得できると説明しています。

参考:
1) Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life. CA: Psyche media.
2) ジョン・アーデン著, 田畑あや子訳(2015)『ブレイン・バイブル』, アルファポリス.