心理学あれこれ

脳の三層構造と心理学

これまで脳の健康は大切だとか、マインドフルネス は脳に効くなどと書いてきましたが、肝心の脳そのものについては書いてこなかったことに気づきました。脳については、もちろんネット検索すると情報は沢山あるのですが、詳しすぎたり省略が多すぎたりで、自分に合った解析度の情報は意外に見つけにくい印象です。私は心理学の視点から脳について学んだので、その視点からの脳の理解に基づき、記事を書いてみます。

神経科学者のMacLean博士が1960年代に提唱した「脳の三位一体説」は、脳の構造を三層に分けます。三層とは、①脳幹、②大脳辺縁系、③大脳新皮質です。脳の話をする時には図があるといいのですが、著作権の関係で貼り付けは難しいのです。関連箇所にはリンクを貼って新しいタブで図が見られるようにしてみますので、ご関心があればリンク先もご覧ください。

まず、脳の三層の図ですが、イメージとしては、中心に脳幹、それを大脳辺縁系が包み込むように層を成し、さらにそれを大脳新皮質が覆っています。図はこちら

①脳幹は「爬虫類の脳」とも呼ばれ、2歳までに完成します。意思とは関係なく生命維持のための反射的現象を司ります。呼吸、血圧、体温などの調節や、消化液分泌を担っています。また、快•不快、飢え、疲労、攻撃、不安、性欲など生命保持に必要な感覚は脳幹に依存しています。身の危険を感じた時の反射的反応もこの脳の領域が司っています。時間感覚は30秒ほどの「現在」がその全てです(過去や未来を認識しません)。脳幹はその機能が全て「自己生存のため」であることからも推測されるように、その世界に「他者」は存在しません。機能としては、厳格で衝動的になる傾向があります。爬虫類を思い浮かべると、なんとなく想像できそうです。ちなみに大きさは、成人の脳幹で長さ7.5センチ、太さは親指ほどです。

② 大脳辺縁系は「古いほ乳類の脳」とも呼ばれ、2-10歳に発達します。愛情、喜び、怒り、嫌悪などの感情を司ります。また共感による社会的なつながり(集団の形成)が可能なのも大脳辺縁系の機能によります。子犬を想像してみると、その機能が理解しやすいと思います。喜んだり、すねたり、拒否したりと感情豊かですし、飼い主や他の子犬と遊んだりと「他者」を認識し、他者への共感を持ちます。ある程度の躾(訓練)もできます(過去と未来の認識力、記憶能力がある)。

③ 大脳新皮質は「新しいほ乳類の脳」とも呼ばれ、男性では10-29歳、女性では10-21歳にかけて発達します。言語、抽象思考、想像、将来計画、倫理など、人間ならではの活動はこの大脳新皮質が司ります。柔軟で際限なく学ぶ能力を有し、人間の文化発展はこの脳の部分によります。

人間の脳は、成長するにつれて、①脳幹→②大脳辺縁系→③大脳新皮質と発達していきます。これは動物の進化の過程とも重なります。①脳幹と②大脳辺縁系は他の動物と共通するところが大きいのですが、③大脳新皮質は人間の特徴を表現する脳だと言えます。別の言い方をすると、①は自分ではコントロールできない生命維持活動、②は感情や欲望など情動活動、③は理性や思考活動を司るとも言えます。鍵になる欲求は、①脳幹が「安全」、②大脳辺縁系が「仲間」、③大脳辺縁系が「成長」と整理できます。

MacLean博士は「脳の三位一体説」を1960年代に提唱し始め、1990年にこの考えに基づいた本を出版しました。その後、脳の研究が進むにつれ、この三位一体説にはあてはまらない発見も多くなされてきました。しかし、心理学の文脈で脳を学ぶ時には、この三層構造はさまざまな現象の説明がしやすいモデルです。

引き続き、マインドフルネスをすると脳にどのような影響があるのかなどについて書いていこうと思います。

参考)
Gabriella Grant, Director of California Center of Excellence for Trauma Informed Care “Trauma-Informed Programs for Children, Youth and Families” (トレーニング資料)ホームページ:http://www.trauma-informed-california.org