海馬と扁桃体

脳を三層構造で捉えたときの一つの層である大脳辺縁系は、喜怒哀楽などの感情を司る脳です。その主要な構成要素は、海馬扁桃体です。

海馬は記憶に、扁桃体は感情に関与すると大きく分けられますが、記憶のうちでも情動と強く関連した記憶には扁桃体が重要な役割を果たしています。

画像はウィキペディアのものが秀逸で、3Dで回転しています(!)。ご関心があれば、海馬はこちらから「3.画像」を、扁桃体はこちらから「5.画像」を参照してください。ちなみに大きさですが、成人の場合、海馬の長さは6センチほど、扁桃体は1.5〜2センチです。

海馬は、タツノオトシゴのような形状をしていて、視覚・聴覚・嗅覚・触覚などから入ってくる感覚情報を全て集めて記憶として整理します。新しい記憶はまず海馬に蓄えられ、それが大脳に送られると長期記憶になります。

扁桃体は、味覚、嗅覚などの情報と海馬からの情報を受け、記憶と照らし合わせて快、不快、好き、嫌いを判別します。実は、扁桃体は感情の中でも特に不安、恐怖や嫌悪といった感情に大きく関与しています。恐怖や嫌悪などの感情が強くなればなるほど、扁桃体の血流が増加することが実験によって明らかになっています。そして扁桃体でつくられた快、不快といった情動は、海馬に送られ、海馬の記憶形成に大きく影響を与え、記憶の固定化(長期記憶にするかどうか)の調節に関与しています。

このように海馬と扁桃体は密接に関係し、情動と記憶の形成は互いに深く影響し合っています。

PTSDや発達性トラウマは海馬や扁桃体に影響を及ぼします。長期的にトラウマの経験を繰り返すと、海馬はその成長が阻害され、扁桃体は常に興奮しやすい状態になる傾向があります。他方で、マインドフルネスの効果はこの海馬と扁桃体にも及び、端的にいうと、海馬のサイズは大きくなり扁桃体は小さくなることが実証されています。トラウマ・ケアをする際にマインドフルネスが注目されるのはこのためです。

東京カウンセリングスペースHiRaKuでは、積極的にマインドフルネスを取り入れています。クライエントの希望があれば、一緒に練習したり、生活の中に取り入れる工夫を考えたりします。また、セッションの始めにマインドフルネスを取り入れ、心を落ち着いた状態にしてからスタートすることをお勧めしています(もちろん強制ではありません)。

(参考)
1) CREST大隅プロジェクト ニュースレター「Brain and Mind Vol.4」2006年9月発行 (抜粋)脳と心のお話(第四話)「恐怖する脳、感動する脳」
2) 高橋医院(ブログ)「大脳辺縁系」(2017年11月9日)
3) ひだまりこころクリニック(ブログ)「「偏桃体」と「海馬」とはなにか?不安に関係ある?」(2017年6月26日)