家族療法

ジェノグラム ④ 三角関係

ジェノグラムを解釈する視点について書いてきましたが、最後に「三角関係」を取り上げます。

関係性のパターン:三角関係

上の図は、三世代に渡って同じ関係性のパターンが繰り返されている例です。図中、男性は四角、女性は丸で表されています。どの婚姻関係も関係性は疎遠(点線)で、同性の子との関係性は対立的(ギザギザ線)で、異性の子どもとの関係は親密(三重線)です。点線、ギザギザ線、三重線で三角がいくつも形成されています。

二者関係が不安定になると、周囲の誰かを巻き込んで三角関係を形成しようとします。これを「三角関係化する」といいます。例えば、夫が不在がちなことを不安に感じて、妻が子どもとの距離を縮めて安定する、などです。この三角関係に実両親が入り込むこともありますし、祖父母と孫が三角関係を形成することもあります。

ただ、3人で形成する関係が全て「三角関係」であるとは限りません。各々が独立を保ったまま関係していて、他に影響を与えようとすることなく自分の態度を決めることができれば、それはジェノグラムでいう「三角関係」ではありません。

対して、ジェノグラムでいう「三角関係」では、各々の行動が反応的です。つまり、他の二人に影響を与えようとして自分の態度を決めていきます。3人が張り詰めたゴム紐の内側にいて、それを落とさないようしなければならない状態を想像してください。一人が内側に進むとゴム紐が緩んで落ちてしまうので、残りの二人は距離を広げなければなりません。逆に、二人が距離を開くと、3人目は自分の意思とは関係なく、反応的にその二人に近付くことになります。

「無害な」三角関係は誰でも経験したことがあるでしょう。父親が子どもに「お母さんは最近仕事ばっかりだね」とボソッとグチをこぼすなどです。家族療法で課題になるのは、三角関係が恒常的で、問題を見えにくくする一方で問題を硬直化してしまう時です。それは、三者がそれぞれと自由な関係性を持つという選択を不可能します。

家族システム論では家族メンバーの個別化を重視しますので、臨床家は「脱三角関係化」を支援します。

ジェノグラムの活用方法

ジェノグラムは、自分で作成して眺めるだけでも家族関係を洞察する機会になります。ただ、やはり「療法」としてのパワフルさを体験するには信頼できる他者とともにワークすることが必要になります。なぜなら、単に頭によって知的に確認するのではなく、それが感情を伴う体験として確認されることが必要だからです。残念ながら、米国でも一時はとても勢いのあった家族療法も現在はそれほどでもありません。皆が忙しすぎて、全員が集まることが困難になったことが一因です。また、家族セラピーには、通常2名のセラピストが参加しますが、その分、料金が高めになるという課題もあります。個人的には残念だと思いますが、ジェノグラムを個人で作成して、それをセラピスト(カウンセラー)と眺めながら対話をすることでも、新しい気づきを得ることは十分に可能だと思います。

参考)
Nichols, M. (2011). The essentials of Family Therapy. Pearson.
McGoldrick, M, & Gerson, R. (1985). Genograms in family assessment. New York: Norton. (石川元、渋沢田鶴子訳『ジェノグラムのはなし―家系図と家族療法』東京図書)
河合隼雄 (1967) 「ユング心理学入門」培風館