日本料理をあちらから見ると

少なくとも私の知っている限りでは、韓国料理と言えば、キムチに代表されるように辛いメニューが多いと思います。学生の頃から私は韓国人の友人が身近に比較的多くいて、彼らの率直な物言いに好感を持っていました。以前に海外に住んでいる時に、そこでの韓国人の友人にきかれました。やはり直球の質問です。

「なんで日本料理ってあんなに甘いの?」

これは、実はかなり前の話ですが、「日本料理は甘い」と言われてとても驚いたことを覚えています。同時に、なるほどね、私にとって辛い料理を食べる国の人からみれば、確かに日本料理は甘いと言えると納得もしました。日本料理は、基本的になんでも砂糖、みりん、醤油、酒で味付けしますから。

また、英国料理と言ってよいのかわかりませんが、イギリスにいた頃、地元の人の調理法で印象に残っているのは、「野菜のくたくた煮」です。メインが肉で(魚はめったに食べない印象です。フィッシュアンドチップスは例外的)、その付け合わせの野菜は、それが人参でもキャベツでもほうれん草でも、何であっても水から煮始め、すごく柔らかくなるまで調理していました。そして、グレービーをかけて食べます。正直なところ、味が薄いな、味があまりしないな、と感じていました。

ある日、仲良しの英国人の友人と日本料理を食べた帰り道、礼儀正しくおずおずと、その友人が私に言いました。

「気を悪くしたらごめんなさい。もしよかったら教えてほしいのだけど、どうして日本料理って塩辛いの?」

日本料理が塩辛いと言われて、かなり驚きました。正直なところ、多少気を悪くしたと言うべきかもしれません。いや、日本料理が塩辛いのではなく、英国料理の味が薄いのでは?。。いえいえ、結局、それは日本料理をこちらから見るか、あちらから見るかの違いでした。確かに、私にとって味のあまりしない英国料理を食べている人にとってみれば、日本料理は塩辛いのだ、という(当時の私にとっては)衝撃の事実に気づきました。

日本に住み、日本料理に慣れている人とばかり一緒にいると、日本料理が当たり前になり過ぎて、「日本料理は甘い」「日本料理は塩辛い」という視点が存在することを感じる機会がありません。また、「甘い」と「塩辛い」では全く別の料理のことを形容しているようにすら感じられますが、同じ日本料理でも、判断基準をどこに置くかによって「甘く」も「塩辛く」もなるということでしょう。

あちら側の視点をざっくばらんに共有してくれる人とコニュニケーションを取ることの大切さを感じます。