「脳の健康が人生の質を決める」という表現に、「どういうこと?」と感じている方も、このブログを読み進めていくうちに納得して、自分の脳を意識的に大切にしてくださるようになるといいなと思って書き進めます。
前の記事でお伝えした全体論的アプローチは、人の存在を「body-heart-mind-spirit」というフレームワークで捉えます。このフレームワークを使って脳を考えてみましょう。例えば、風を顔に受けて「とても強い」と感じる(身体感覚)のは bodyレベルの脳です。強い風に戸惑い(感情)が起きるとき、それはheartレベルの脳の指令によって分泌されたホルモンが原因です。「風に当たりすぎて体調を崩した」と過去を思い出す(記憶)のも、「風が強いから屋内に移動しよう」と考える(思考)のも、mindレベルの脳です。絶え間なく吹き荒れる強い風に畏怖の念を感じ、自分より大きな何かとの繋がりを感じるようなことがあれば、それはspiritレベルの脳が感じることです。このように、人の存在の全ての要素において脳が経験することが私たちの経験になるのです。「脳が全てを決める」の意味するところを、おわかりいただけたでしょうか。そして、脳の機能が高ければ高いほど、つまり脳の健康状態が良ければ良いほど、「body-heart-mind-spirit」の全てのレベルでより高質の情報を得てそれを処理することで、世界をよりよく経験できるのです。
前置きが長くなりましたが、それでは脳の健康はどのように改善することができるのでしょうか。その鍵は、ニューロン新生(神経新生)にあります。ニューロンは脳細胞のことで、ニューロン新生は、脳細胞が新たに作られることを指します。比較的最近になって、人間の成人の脳も新しい脳細胞を作り続けていることが確証されました。それまでは「脳細胞の数は成人期までは増え続けるが、その後は次第に減っていくのみで新しい脳細胞は作られない」という考え方が「科学的定説」でした。しかし、最新の科学的知見によれば、「年齢に関わらず」脳は自らを新しく作り変えているのです。そして私たちは生活スタイルと食習慣によって、ニューロン新生の速度を3倍から5倍に上げることが可能です(実際は人間での実験は難しいため、主にネズミを使った実験結果からの類推です。しかし、哺乳動物は種を超えて同じ脳構造を共有しているので、ネズミでの実験結果を人間に一般化することの妥当性は高いと判断して論を進めています)。
この具体的な方法を全体論的アプローチのフレームワーク「body-heart-mind-spirit」を使って紹介していきたい思います。
参考:
1) Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life. CA: Psyche media.
2) ジョン・アーデン著, 田畑あや子訳(2015)『ブレイン・バイブル』, アルファポリス.