脳の健康と音楽

脳の健康の一つの重要なバロメーターは、神経新生(ニューロン新生、ニューロジェニシス)の速度です。つまり、脳細胞が新しく生まれる速度が早いほど、脳は健康だということです。

最近の研究によって、音楽がニューロン新生を促進する可能性があることが指摘されました。騒音はニューロン新生を抑制するとのことですが、おそらく、それは騒音がストレスになるからでしょう。一方で、音楽は、成人はもちろん、胎児のニューロン新生も促進するようです。

ネズミを使った実験では、実験に使われたモーツアルトや他のクラシック音楽によく反応しました。人間に当てはめてみれば、おそらく、個人の好みに合う音楽を聴くことがニューロン新生を促進すると考えられます。耳障りだと感じる音楽は、それが例え世間的に評価の高いものであったとしても、ニューロン新生への貢献は期待できないといえそうです。

建設現場の音や、行き交う車の騒音などは、ストレスレベルを上昇させニューロン新生を抑制します。それほど気にならないようなレベルの騒音もストレスレベルを挙げることがわかっており、ある研究によれば、空港の近くに住むと、循環器系の疾患を患うリスクが3.5%高くなることが示されました。

実は、好みの音楽よりもニューロン新生を促進する効果が大きいのは、静寂です。おそらく、静けさの中にいると、神経が研ぎ澄まされ、それが脳への刺激となるのかもしれません。現代生活では、静寂の中に身を置く機会にはそうそう巡り合うことはないかもしれませんが、脳の健康には、騒音はマイナス効果、好みの音楽はプラス効果があり、静けさにはそれ以上のプラス効果があると言えそうです。

参考:
Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life, CA: Psyche media.