認知行動療法

認知の歪み ③ 「べき」思考

引き続き、認知の歪みのパターンについてご紹介します。日々の生活の中で少し意識することで、自分で気持ちをコントロールしやすくなると思います。

「べき」思考

今回ご紹介する「べき」思考というのは、文字通り、「こうすべきだ」「こうすべきでない」という自分の中での縛りです。自分の知らないうちに社会から取り入れている「未検討のルール」とも言えます。この「べき」思考に縛られると、自分の感覚よりも他者(社会、環境など)の決めた標準に従って生きることになります。そもそもが自分に合わせて自分で決めたものではありませんから、往々にして実現困難な理想に根差していることが多いのも「べき」思考の特徴です(例えば、「いつも努力をすべき」「(どんな親でも)親を尊敬すべき」「女性は○○であるべき」等々)。それが積み重なっていくと、本来自分が何をやりたかったのか、どう生きたかったのかを感じることが難しくなっていき、場合によっては「偽りの目的」に邁進することにもなりかねません。「べき」思考に従い偽りの目的に向かって努力を続けても、抑圧された「本来の自分」が消失するわけではありません。それは、いろいろな形をとって現れる可能性があります。その一つの形が「漠然とした不安」です。

自分の中にどのような「べき」思考があるのか、それを検討し、本当にそれが自分に大切なルールなのかを検討した上で、不必要なものは手放す作業が必要になります。「べき」思考は自分の価値観に非常に近いところにある場合が多いので、自分で気づくことが難しいこともあります。そのような時にはカウンセリングなどを活用することも検討してみてもいいかもしれません。関連して、先日、外国文化の中で生活することで自分の「べき」思考について気づいたという経験を投稿しましたのでよろしかったらご覧ください。

感染症拡大の文脈でも、いろいろな「べき」が取り沙汰されています。今の時点では誰も正解を知らないので、不安から「べき」思考に走りがちになるのも理解できますが、それが自分を縛りすぎるとストレスになります。世間で言われる「べき」論をそのまま受け入れるのではなく、政府や専門機関の情報を集めて、自分で考えて自分のルールを意識的に選択するようにしたいものです。