ジェノグラム ①

ジェノグラムとは

ジェノグラムは、過去三世代(以上)にわたる家族関係を示す図です。家系図をイメージしていただくと近いかもしません。

ジェノグラムは、家族療法の中でも最もメジャーな理論の一つである「システム論」で使われ始めました。三世代さかのぼることで、世代を超えて繰り返されるパータン(依存症や自殺など)が見出されたり、現家族の問題をより広い視野で眺めることで気づきを促したりします。下図はその最もシンプルなものの例です。実際には、次節で述べる様々な情報を書き加えていきます。参考文献の論文(中村(2017))にも事例の記載があります。

ジェノグラムの作り方

まずは情報を収集します。基本的には、名前、性別、生年月日、学歴、職業、家族内での関係(誰と親密で誰と疎遠かなど)、病歴など。

ジェノグラムには記号が使用されます。例えば男性は□、女性は○、死亡はそのなかに×が入れられます。また関係についても対立はギザギザの線、疎遠な関係は点線、といったように。統一された記号のルールはなく、臨床家によって表現方法が異なります。離婚歴がある場合には過去のパートナーも書き込みますし、妊娠中絶や死産などの歴史があればそれらも全て書き込みます。

また、現在のジェノグラムだけでなく、大きな変化があった時点のものも作成します。例えば家族の喪失体験(家族メンバーの死など)や、引越し等です。大きな変化があると、ジェノグラムにも変化が生じます。例えば、引越で実家から遠くに住居を構えた場合、両親との関係性の変化が生じ、それが現家族にも影響することが考えられます。

ジェノグラムの活用方法

ジェノグラムは、家族を「システム」と見立て、その構造、家族メンバーの役割、そしてメンバー間の関係性の三点を主観的に解釈し、問題の原因について仮説を立てることに使われます。また、状況によっては、家族を取り巻く環境(コミュニテイー、文化など)も考慮に入れて考えることで、より視野を広げて解決策を検討することもあります。

例えば、自分たち夫婦の関係性について考える時、ジェノグラムで三世代前まで遡って全体から自分たちの関係を眺めると、それまでとは違った意味合いが見えてくることがよくあります。それは、私たちが家族に強く影響を受けて成長することを考えれば、ある意味当然とも言えます。

興味深いのは、システムとしての家族に変化をもたらすのは、家族の中の一人から始められることです。手を取り合い一定のリズムに合わせて一緒にステップを踏むグループを家族に例えると、その中の一人が異なるリズムに合わせてステップを踏み始めたなら、それが周囲に一定の影響(変化)を与えるのは当然の結果です。実際には、家族の抵抗のために簡単にステップを変更できないこともありますが。

ジェノグラムは新鮮な視点を提供し、内省を深めるパワフルなツールです。ジェノグラムは、自分だけでもある程度書けますし、ジェノグラム作成を契機に、両親に彼ら自身のことや祖父母のことを話してもらうのも良いのではないでしょうか。意外に知らないことが多いと思います。

参考)
Nichols, M. (2011). The essentials of Family Therapy. Pearson.
McGoldrick, M, & Gerson, R. (1985). Genograms in family assessment. New York: Norton. (石川元、渋沢田鶴子訳『ジェノグラムのはなし―家系図と家族療法』東京図書)
中村伸一 (2017)『家族療法のいくつかの考え方』家族社会学研究第29巻1号(pp. 38-48) https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjoffamilysociology/29/1/29_38/_pdf