脳の健康〈新しい経験〉

人間は、ルーティンを好みます。いつもと同じ一日の過ごし方、慣例、日常の習慣など。なぜかというと、同じことを繰り返す方が、脳が効率的に処理できるからです。例えば、楽器で初めて挑戦する曲を吹く場合、初日、2日目、3日目と練習を重ねるに連れ、指の動きはスムーズになり、演奏が上達していきます。これは脳内に新しいシナプス結合が生まれ、脳にとってその演奏のための運指が、ある意味「ルーチン化」していくためです。私たちが問題なく何かをするとき、脳は楽なのです。結果として、通常私たちはルーティンを好み、できないことよりも、できることを好んで繰り返します。

このように考えると、脳の活性化には、意識的に新しい経験、新しい感覚刺激を取り入れることが大切であることが、よく理解できると思います。楽をしていると筋肉も衰えるように、慣れきったことばかりしていると脳も衰えるというわけです。

新しい経験、新しい刺激、といっても何も外国旅行をする必要はありません。よく行く近所の店や最寄駅まで、毎回同じ道を使っていませんか。これは、皆さんの脳が効率化を実行している証です。そこで、いつもの買い物に行くのに違う道を使ってみる、これだけでも脳には刺激になります。また、新しい感覚刺激としては、室内の装飾が挙げられます。これも、大規模な模様替えをする必要はなく、いつもと違う色のものを置いみるだけで違います。例えば、花でもランチョンマットでも良いのです。それから、新しいレシピに挑戦することもいいでしょうし、見たことのない映画を観ることも、初めて会う人と話すことも有効です。感染拡大を防ぐために、以前のように気軽に人と集うことは難しくなりましたが、オンラインでセミナー等が活発に開かれるようになりました。以前だったら現地に行かないと参加できなかったセミナーにも、かえって参加しやすくなった面があると思います。

テレビもある意味では新しい刺激の供給源になると考えられますが、あまりに長時間見すぎると、認知機能の衰えに影響するという研究がありますから、少し注意が必要なようです。

新型コロナウィルス感染防止のために自宅で過ごす時間が増え、結果として静かな筋トレブームが起きたり、自転車通勤する人が増加したりと、実は新しいことに挑戦しやすい環境かもしれません。

皆さんは、最近、なにか新しいことに挑戦しましたか。

参考:
Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life, CA: Psyche media.