今回は、身体レベルでニューロン新生を刺激する方法の一つとして運動についてご紹介します。ちなみに、身体レベルでは、以前に睡眠について取り上げています。
毎日8時間から12時間座っている私たちの生活スタイルは、極めて最近になって起きてきた現象で、長い進化の歴史から見ると不自然です。私たちの身体は動くために作られています。そして動くと脳が目覚め、ニューロン新生が活性化します。
運動の中でも、脳の健康に最も効果があるとされるのが有酸素運動です。
実験でネズミの檻に運動用の回し車を置くと、ネズミは自発的に毎日その回し車で走るようになり、その結果、海馬は新しい脳細胞を多く作り出すことが示されています。
さらに、BMPと呼ばれる脳タンパク質はニューロン新生を減速させ、神経幹細胞を睡眠状態にする作用がありますが、運動用の回し車を1週間使ったネズミのBMPレベルが50パーセント減少したことが報告されています。
さらに、有酸素運動はニューロン新生を刺激するノギンと呼ばれる別のタンパク質を増加させることもわかっています。まさに、いいことずくめです。
有酸素運動によって血行が良くなりますが、ニューロン新生には血流の改善はプラスに働きます。なぜなら、脳細胞に栄養が届きやすくなるからです。有酸素運動には血流の増加以外にも、抗炎症、抗酸化作用、そしてホルモン変化などの良い効果があり、これらは全て脳の機能を支えるものです。
例えば散歩ですが、1週間に3日から4日、1回20分から始めてみましょう。ウォーキングの良さがわかってきたら、少し早く、少し長い距離を歩いてみましょう。少しずつ運動量を増やしていき、準備が整っていると感じたら、呼吸が早くなるようにして、様子を見ながら40分くらいまで伸ばせれば尚よしです。
ポイントは「楽しめるもの」をすること。予備段階ですが実験結果があり、無理やり回し車を走らされたネズミよりも、自ら進んで走ったネズミの方がニューロン新生が活発化したそうです。
「楽しめる」ものを「少しずつ」、週に3日からスタートしてみる。ちょっと辛いなと感じたら、脳の血行が良くなっていること、BMPレベルが50%下がっていることなどを思い浮かべてみてください。
新型コロナウィルスのために活動範囲が限られがちですが、このような状況だからこそ楽しんで運動したいものです。折しも季節は運動の秋。運動を始めるには絶好の季節です。
参考:
Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life, CA: Psyche media.