脳の健康〈自然〉

進化の過程を考えれば、自然環境が脳の健康に良いことは予想できますが、実際に研究によってニューロン新生を促進する効果が明らかにされています。自然環境の中で飼育されたネズミは、人工的な環境で飼育されたネズミよりも、ニューロン新生が活発であったことを示す研究があります。また、同じ50分の散歩でも、人工的な都市の歩道を歩くのと、松林の中を歩くのでは、その効果に違いがあることが証明されています。自然の中を歩くとストレスホルモンが減少し、「若返りホルモン」と呼ばれるDHEAが増加します。このDHEAはニューロン新生を刺激します。ちなみに米国では、自然が人間の自己治癒力を向上させることを活かして、エコ・サイコロジーが盛んになっています。

また、ニューロン新生との直接的な関係は実証されていないものの、自然には以下の効用があることを示す研究もあります。まず、窓から緑の見える環境で過ごした学生は、そうでない環境の学生よりも試験結果が良いという研究です。さらに、高速道路沿いに植樹がある場合、運転手が怒ったり衝動的になることが減少することを示す研究もあります。また、室内に緑があると目の疲れを癒し、創造性を刺激し、集中力の持続時間が長くなるといわれています。

研究で実証されている自然の効用を列挙しましたが、体感としても納得できるものが多いのではないでしょうか。以下に自然を生活に取り入れる方法の例を挙げてみます。

家の中に観葉植物や切り花を飾る。
ベランダで野菜を育てる。
カフェや図書館などで、緑の見える窓際に場所を見つける
公園の中を散歩する。それが無理なら空を見上げてみる。
週末などを利用して自然の中で時間を過ごす機会を作る。

自然を生活に取り入れることは、比較的取り組みやすいものだと思います。風にそよぐ木々の緑や、花壇に咲く季節の花を見ると、脳が「快」を感じている気がしませんか。ちなみに、私が個人的に気に入っているのは、切り花を室内に飾ることです。毎回違う花を飾ることで部屋の景色が変化しますし、花は日々その開き加減や香りが変化します。後日書く機会があるかもしれませんが、脳は「変化」や「新鮮さ」を好むので、切り花は「自然」も「変化」も取り入れられる一石二鳥の方法だと思います。よろしかったらお試しください。

参考:
Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life, CA: Psyche media.