心理カウンセリングで私は「body-mind-heart-spirit」というフレームワークで人間の在り方、健康や幸福を捉えます。これは、ホリスティック・アプローチ(全体論的アプローチ)と呼ばれるもので、東洋と西洋の伝統の統合がその基礎にあります。
ところで、皆さんは自分の脳についてどのくらい関心をお持ちでしょうか。脳は驚異的に複雑な器官です。成人の脳には百兆のシナプスがあると言われていますが、数字が大きすぎてその複雑さを実感を持って捉えることは困難に感じます。この複雑さの程度について、人によっては「宇宙一複雑な器官」と表現するほどです。
この脳は私たちが生きる上でどのような働きをしているのでしょうか。例えば、心は脳にあるのでしょうか。意識は脳で生じるのでしょうか。そもそも意識とは何でしょうか。これは古来より哲学者が問い続けてきたことでもあります。神経科学が飛躍的に進歩している今日、答えを求めて様々な科学的な仮説が提出されているようです。
ホロトロピック・ブレスワークで有名なスタニスラフ・グロフ博士によると、脳はいわゆる信号受信機能のような役割を担っています。例えばテレビを想像していただくといいかもしれません。テレビは電波をキャッチして、チャネルを回すといろいろな番組が流れてきます。しかし、テレビを分解してもそこには歌手も有名シェフによる料理も事件現場もなく、ただ部品のみです。脳もテレビのように受信機能を持っていて、様々な周波数で流れている情報をキャッチします。そして、脳の機能が良ければ良いほど電波に対する感度が上がり、より多くの情報をキャッチすることができると考えられます。ここでいう情報というのは、感覚、感情、思考、そして直感など人間が経験する全てです。ところが、脳を解剖したらそこに何があるかは皆さんご存知の通りです。
別の言い方をすると、私たちが何かを経験する時、それは全て脳によって受信されあ情報が基づいている考えられます。見ることも、聞くことも、感じることも、考えることも、ひらめきも、全て脳によって経験されると考えるわけです。脳が経験することが、すなわち私たちが世界を経験することになります。さらにその経験によって脳が影響を受けます。
脳が経験したことを受けて、私たちが新しい経験を積み、それがさらに脳に影響を与える。これは卵と鶏のようにも聞こえますが、実は、脳に対して私たちは積極的に働きかけることができます。それが、サイコセラピーでもありますし、ニューロン新生を活性化することでもあります。ご縁があり、私はニューロン新生の活性化について詳しく学ぶ機会がありましたので、〈脳トレ〉シリーズとして、少しずつその内容を共有できたらと思っています。
参考:
1) Cortright, B. (2015). The Neurogenesis Diet & lifestyle: Upgrade your grain, upgrade your life. CA: Psyche media.
2) ジョン・アーデン著, 田畑あや子訳(2015)『ブレイン・バイブル』, アルファポリス.