久しぶりの投稿になります。今回はカウンセリングの終わりについて書きたいと思います。始めたことには必ず終わりがきます。カウンセリングも例外ではありません。むしろ、カウンセリングは終わりが来るべきプロセスとさえ言えます。カウンセリングの終わりを専門的には「終結」と呼びますが、響きがやや強いように感じるので、この投稿では「卒業」という言葉を使います。
カウンセリングを継続していくと、次第にカウンセリングのゴールに近づいてきたことが感じられる時がきます。そのゴールはカウンセリング開始時に設定したものかもしれませんし、カウンセリングの途中で新たに設定したものかもしれません。「そろそろ、カウンセリングの卒業について考えたい」とクライエントから提案があることもありますし、セラピストからクライエントのゴールの達成度の認識やカウンセリング卒業についての考えを尋ねることもあります。大切なのは、クライエントとセラピストで話し合いながらカウンセリング卒業について決めていくことです。つまり、カウンセリングの卒業というのは最終セッションのことを限定的に意味するのではなく、カウンセリングの終わりに向けたプロセス全体のことを指します。
一般的に、カウンセリング卒業のプロセスは、カウンセリング継続期間の長さと関係があると言われます。つまり、カウンセリング期間が長くなれば、それだけ卒業プロセスも長くなるということです。それは自然なことです。カウンセリング卒業にはそれまでのプロセスの振り返りが含まれますが、カウンセリング継続期間が長くなれば、それだけプロセスの内容が豊かになり、乗り越えてきた山の数は多く、実現した変化は深くなります。また、卒業時点で残された課題の確認や卒業後に起こりうる状況とそれへの対策を考える場合もあります。卒業の日を数ヶ月後と決める場合もあれば、あと数回のセッションで卒業にすると合意することもあります。中には、最終セッションでクライエントが希望するリチュアルをする時もあります。それは、小さな何かの交換かもしれませんし、最後のイメージワークかもしれません。
クライエントにとってカウンセリングの卒業は大きな区切りであり、その意味をセラピストと対話することで「しっかりと終わる」ことは重要な意味を持つと考えられます。カウンセリング卒業は、開いた円を閉じる作業と言えるかもしれません。

カウンセリングの終わりは大切な区切りであると同時に、オープン・エンディングです。なぜなら、カウンセリング卒業後もクライエントの人生は続いていくからです。もしも将来、突発的な状況が生じたときにこころのバランスを整える必要が生じれば、カウンセリングを単発で受ける可能性もあるかもしれません。また、自分の中に探求した新しいテーマが見つかった場合には、再度、継続的にカウンセリングを受けることもあるでしょう。もちろん、最終セッションがクライエントがセラピストに会う最後の機会になる可能性も充分に存在しますが、先のことはわからないという意味で、カウンセリング卒業後もセラピストはドアを開いたままにします。この意味で、カウンセリング卒業はオープン・エンディングです。
ドアは開いたままにしますが、カウンセリング卒業後にセラピストから「最近調子はどうですか。久しぶりにセッションにいらっしゃいませんか」というような連絡はしません。原則としてカウンセリング継続中にセラピストがクライエントに会うのが面接室の中のみであるように、カウンセリング卒業後もセラピストは面接室の中に留まり、クライエントとの境界線を維持し続けます。カウンセリング卒業後の境界線の維持についての考え方は、資格やセラピストによってバリエーションがありますが、私はクライエントとの境界線を維持し続けることを大切にしています。