診断とカウンセリング(下)

なんらかの気になる「症状」がある時に、精神科や心療内科に行くべきか、それともカウンセリングに行くべきか、迷った時にどう考えるかという話の続きです。

基本的に、日常生活に大きな支障が出ている状態の時や自分や他者を傷つける可能性がある時には、精神科や心療内科を受診することが有効な選択肢になります。例えば、不眠のために集中力がなく仕事ができない、日常生活が送れないほど不安が高まっている、衝動的に自分を傷つけたくなりコントロールが全くきかない、などといった場合です。精神科や心療内科は薬物療法をその専門としています。薬は効果が出るのが比較的早いので、症状が一番大変で辛い時に、できるだけ安全にそれをやり過ごす手助けをしてくれます。また、「症状が出ても服用する薬を持っている」という安心感が症状を抑える効果を持つ場合もあります。

しかし、薬物療法は対処療法であり、症状を抑える役目はしても、薬で症状の原因を治すことはできません。例えば、大うつ病の際には薬を服用することで辛い症状を抑えることができますが、うつ病そのものを治すことはできません(うつ病の医学的な原因はまだ解明されていません)。PTSDによる不眠や不安といった症状も薬で和らげることができますが、PTSD自体を薬で治すことはできません。症状の改善や解消には、カウンセリング(心理療法)が有効な選択肢になります。

このことは、風邪薬が症状を抑えることができてもウィルスには効かないこと、そして抗生物質も気管支炎などの二次感染症の予防は期待できてもウィルスには効かないことによく似ています。ウィルスを排除するには「自然治癒力」が必要になります。この文脈で言えば、心理カウンセリング(心理療法)は、クライエントの自然治癒力の活性化をサポートすると言えます。

別の言い方をすると、「症状」があっても大きな支障なく日常生活を送れていて、自分や他人を傷つける可能性がない場合には、基本的に心理カウンセリングによって自然治癒力を活性化することが選択肢になります。「症状」が、例えば不安や抑うつであっても、妄想や幻聴であっても、解離やトラウマ関連であっても、早急に症状を抑える必要が認められない場合には薬物療法の必要がないからです。ただ、例外もあるので、カウンセリングを受けに行った結果、心理カウンセラーから精神科や心療内科の受診を勧められる場合も考えられます。また、薬物療法と心理療法を併用するケースもあります。

この投稿では、「症状」がある場合に限って書いていますが、カウンセリングがその本領を発揮するのは、臨床的な「症状」(抑うつ、不安、幻聴など)がある場合に限りません。例えば、生きづらさ、自己肯定感の低さ、人間関係の問題などのテーマについてもカウンセリングは効果を持ちますし、欧米では経営者等の「心を整える」ためにも活用されています。実際、著名な心理学者であるユングのクライエントのうち、三分の一(つまり約3人に1人)のクライエントは社会的に適応していて十分な成功を収めた人々でした。

スペースHiRaKuでは、つらい「症状」を抱える心のケアから、さらなる自己成長のサポートまで、クライエントが自分らしく生き生きと生活できるような心理的サポート全般を心理カウンセリグと捉えています。